【最終回】B1絶対残留!CLIMAX PROJECT vol.16
『REVIEW of TOYAMA GROUSES~今、真価が問われる。~』
B1残留プレーオフ出場を回避するには、2連勝が絶対条件という“崖っぷち”で挑んだ最終節の富山グラウジーズ戦。
ともに負けられない中、レイクスが底力を発揮し、B1残留を決めた。
5.5[SAT] 滋賀 82-67 富山 WIN
5.6[SUN] 滋賀 78-76 富山 WIN
@ウカルちゃんアリーナ
熱狂が冷め止まないアリーナで、ショーン・デニスHCは「勝ったぞー!」と叫んだ。感極まったレイクスブルーの選手たち、歓喜に涙するブースターたちに見守られながら。昨季とはまた違った、B1残留決定のワンシーンがここにはあった。
名将ショーン・デニスHCのもと、クラブ創設10周年という節目のシーズンを迎えたレイクスは順調だった。日本人選手は昨季と同じメンバーだが、一人一人はまるで別人のようにやる気をみなぎらせていた。プロ2年目の高橋耕陽が眠っていたポテンシャルを開花させ、帰化選手のファイ・サンバが進化し、エース並里成がチームの潤滑油として機能…。チームとしてうまくベースアップし、9月の関西アーリーカップを準優勝、レギュラーシーズン開幕戦の横浜ビー・コルセアーズを73-56で抑え、白星発進となった。その後、6連敗と苦しみながらも2017年を11勝17敗とまずまずの成績で終えるなど、全ては順調かに思えた。
だが、クリスマス直前の島根スサノオマジック戦GAME2に敗れると、そこから横浜、栃木ブレックス、アルバルク東京、千葉ジェッツ、琉球ゴールデンキングス、大阪エヴェッサと敗戦が続き、気がつけば悪夢の12連敗。その後はなんとか持ち直したが、この12連敗が響き、2シーズン連続でB1残留争いをすることになった。
シーズン終了後、デニスHCはこの12連敗を「クレイジーだった」と話す。「その期間、チームや選手たちは我々コーチ陣が期待するスピードでは成長できなかった。それがシーズンを通しての一番の想定外。チームにとってタフな時期でした」
残留を決めた富山戦の後、涙を流しながら「勝ったぞー!」とシャウトした狩野祐介は、記者会見で「(60試合を振り返り)つらかったですね」とつぶやくように話した。「勝たないといけないというプレッシャーもあって…。結果は物足りないですけど、とりあえずB1残留を決めて、今はほっとしています」
狩野に限らず、シーズンを通してコート上のリーダーであり続けた並里成、副キャプテンの長谷川智伸、成長を続けたサンバ、高橋耕陽、佐藤卓磨、ディール・フィッシャーなど選手はみな、残留を決めた瞬間に安堵の表情を浮かべた。それだけ重圧と戦ってきた証拠だった。
それぞれが、いろんな想いを背負っていた最終節の富山戦。GAME1は、選手たちの気持ちとは裏腹に第1Qから富山のペースでゲームが進み、12-22と10点差をつけられた。狩野が「GAME2よりも1の方が試合前は緊張があった」と話すように、重圧が選手たちの動きを鈍らせていたのかもしれない。だが、第3Qは“いいディフェンスからいいオフェンスへ”というレイクスのバスケを遂行し、12点ビハインドをひっくり返して逆転に成功。その勢いのまま第4Qも点差を広げ、なんとかB1残留プレーオフ出場回避へ首の皮一枚がつながった。
そして翌日。勝った方がB1残留というサバイバルゲームとなったGAME2は、前日の勢いのままレイクスが第1Qで13点リードと突き放す。さらに第2Qでもリードを広げ、前半を17点リードで折り返した。
このまま一気にB1残留を決めるかと思われたが、それほど甘くはなかった。第3Qは富山が得意のトランジションオフェンスで次々と加点。第4Q残り2分47秒には、富山・水戸健史のバスケットカウントで一時は逆転された。ここからは一つのミスが勝敗を分ける緊張感の中でゲームは進み、最後はなんとかレイクスが逃げ切った。勝負を決めるディフェンスリバウンドをみせた高橋耕陽は「今日負けたら残留プレーオフだったので、がむしゃらにリバウンドに行こうと思っていました」と振り返る。この息苦しかった残り2分半は、今シーズンのレイクスを象徴するような時間だった。
この富山戦は、レイクスにとって特別な2試合である。残留を決めたという意味もあるが、自分たちのバスケを貫いて勝てた点に大きな価値がある。デニスHCはこう振り返る。「この1年、チームが成長していく過程を見られたことを本当にうれしく思います。チームが一つになってプレーすることを、この週末(富山戦)にできたとも思います。クラブとしてまだまだ伸びていくことができると感じましたし、先は明るいと思います」
60試合を通して、サイドラインでシリアスな表情をほとんど崩さなかった指揮官は、最後に優しい笑顔を見せてくれた。